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ドッツのコンセプト解説の解説④

1。都市として運営する

 都市として運営するとは、運営陣個々がバラバラでありながらも、なんとなく一定のまとまりを持っているかのような形で運営が行われていくということ。実際の都市も、全てが綿密な計画の下に開発されたわけではないが、それでもやはりその都市の特有の雰囲気とか一定のまとまりがあったりする。同様に、ドッツ運営陣はみんなバラバラでありながら合議を経てそれぞれの思惑のどれとも違う何かが生まれ、後からそこに一貫したロジックがあったかのように語られる。だからコンセプトがあってそれに従ったコンテンツがあるというよりも、コンテンツという具体的な成果の後で、それにある程度の統一性を与えるためにコンセプトが動員される。

 次にドッツの都市性について。まず都市の3つの特徴の確認から。①出会いたい人に自覚的に出会える場。②思わぬ新しい偶然の出会いがある場。③今まで知っている世界に、何度も別の仕方で出会う場。①は最近のアイドルグループ自体の多様性と、そのメンバーの女の子の多様性に対応している。しかし、ドッツは②③にも対応している。アイドルというフィルターを通して、自力では出会うことのなかったかもしれない音楽や人に偶然出会うこと(②)。さらに、・ちゃん=都市というコンセプトによって、今まで何とも思わなかった都市の中の様々な場所やモノなどに、・ちゃんを見出すこと(③)。

2。・・・・・・・・・というグループ名について

①集団の融通無碍性・非本質主義を体現している

 ・・・・・・・・・は記号なのか沈黙なのか模様なのか何なのか、そもそもグループ名なのか、全然わからない。だから人や状況によって捉え方が変わるので、この名前はグループの多面性を表現できている(融通無碍性)。また、これを何と呼ぶかを最終的に決める権力を誰も(運営ですら)持っていない(非本質主義)。

 ただし、注意しなければならないのは、ドッツが融通無碍の、何でもありのグループだということ自体にはもう価値がないということ。重要なのは、何でもありの中でじゃあ何を生み出すのかということで、そのためには「王道アイドル性」というコンセプトが重要になる。

②象徴的な図形をハッキングできる

 ・や・・・・・・・・・は、いろんな円形のものに見立てることができるので、様々なものを・ちゃんに見立てることができる。・は様々なモノに形態変化するが、女の子の・ちゃんもその中の一つ。それらの形の間に優劣はない。

 また・ちゃんは、人間あるいはモノであるだけでなく、情報でもある。そしてそうした情報・人間・モノを等価に生み出すエネルギー=流れこそが都市であり、そのエネルギーが何らかの形で観測されると、情報や人間やモノになる。

③検索できない

 ・・・・・・・・・は簡単な文字列で、ウェブ上で公開されている情報なのにGoogleで検索できない。つまり、情報化されているが検索の網にはひっかからない。これは、検索結果が世界であるという立場とも違うし、それに対して検索できない現場の体験を持ち出すという立場とも違う、ドッツの立ち位置を象徴している。

3。無名性とランダム性について

 「・ちゃん」という表記は、誰なのかわからないうえに、単数か複数かもわからない(無名性)。こうした揺らぎを制度化したものが「ランダム性」である。

 また、無名性を都市と関連させて説明すれば、・という名前は、一人あたり10万人分の名前が重ね書きされたことで判読できなくなったもの(重名性)。さらに・ちゃんは、「サングラス的なやつ」によって特定の顔ではなく、様々な顔のイメージに開けている。以上二点によって、・ちゃんは普遍性を持つ。

 ・ちゃんの無名性が持つ揺らぎは、アイドルとの一対一関係をズラす力として働き、「ハコ推し」の雰囲気を作り出す。加えて、・ちゃんの持つ普遍性によって、この「ハコ推し」は、東京という都市の「ハコ推し」へと広がっていく。個人的な好意が、都市全体へと広がっていくような回路が用意されている。


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