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【雑記】「女性アイドル刺傷事件」について

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 すでに多くの人が様々な形でこの事件に言及しているので少し腰が引けるが、自分なりに考えたことを整理するためにも少しだけ書くことにしたい。

 そもそも「女性アイドル刺傷事件」という形容は、端的に言って事実誤認であり、その内実は、シンガーソングライターがそのファンによって刺された、というものであった(これは当初から多くの人が指摘しており、NHKは訂正したようである)。

 ここでまず考えるべきは、なぜこのような報道がなされたかということだろう。こうした報道のされ方に、「どうせアイドルオタクなんてろくでもない奴らだ」という先入観を感じ取り、怒りを覚えた方も少なくないはずだ(当然私も同感である)。

 こうしたステレオタイプ的な見方は、もちろん以前のAKB48の握手会における事件も影響しているだろうが、それ以上に宮崎勤以来の「オタク」に対する先入観によるものが大きいのだろう。今回の事件にまつわる報道によって、こうした先入観が改めて浮き彫りになったと言える。ただ、こうした先入観は以前から存在していたことに加えて、日本における「オタク」の位置づけという大問題に取り組まなくてはいけなくなるので、これ以上の深入りはやめておこう。

 で、次に考えるべきは、(これもすでに多くの人が指摘していることだが)今回のような事件が生じる可能性は、ある程度多く人の注目を浴びるような仕事をしている人すべてに当てはまるということだ。だから、報道のされ方に誤りがあるとかいう以前に、そもそもアイドルに固有の問題ではない。

 しかし、ここで注意しなければならないのは、今回のような事件がアイドル以外の職業でも生じうるということ、あるいはアイドルよりも生じやすい職業が存在するということは、決してアイドル現場において同様の事件が起こる可能性が低いということを意味するわけではないということだ。現にAKBでは、今回ほどではないにせよすでに起きてしまった。

 では、どうすればいいのか。当然接触イベントをなくすとかなくしていくということが考えられる。しかし、これでは根本的な解決になっていないように思えるし、何より一部の心無い人のために接触イベントが禁止されていくのはやはり悲しいことだと言わざるを得ない。*1

 ここで、今回のような事件がアイドルだけに起りうるものではない(し、事実被害者はアイドルではなかった)ということに再び注目したい。これは、ファンとの接触の機会を持つということが、アイドルだけに限定されるものではないということを意味している。とすれば、やはり接触イベント以外のアイドルを楽しむ要素を増やしていくことを模索していく以外に道はないのではないか。

 恐らく、希望はある。アイドルは、無限と言っていいほど様々なことをする可能性を秘めたジャンルであるからだ。このアイドルの定義について詳しいことは、以下の記事を参照してほしい。

scarlet222.hatenablog.com

 最後になるが、こうした文章を書くことは、今回の事件の被害者の方に対して、申し訳ないとも思っている。しかし、私は被害者の方にかける言葉を持ち合わせてなどいない。部外者としてはただ見守るほかない。また、こうした事件から何か教訓などを得ることが、被害者にとってのせめてもの救いになるなどとおこがましいことを思ってもいない。とはいえ、今回の事件は、アイドルに関わる人が考えることを避けては通れない問題を提起していることは確かであり、それぞれが自分なりにこの問題に向き合っていく必要はやはりあるのではないか。

*1:個人的にはアイドルの接触イベントにはあまり興味がなく、ほとんど参加したこともないが、だからといってこうしたイベントを楽しんでいる人が多くいることを否定することなど当然できるはずもない。


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